歯と生活習慣病

虫歯になってしまったら 
歯周病はサイレント・ディジーズ 
入れ歯でもよく噛めます 
その他のお口に関する問題 
はじめに

 皆さんは「8020運動」という言葉をお聞きになったことがありますか? もうどこかで聞いた方も多いかもしれませんが、これは80歳になっても20本の歯を残そうとする厚生労働省と日本歯科医師会が音頭をとって行っている活動です。「8020財団」が調査した結果では、達成者は、まだ15%程度ですが、健康である、自立した生活を送っている、痴呆の割合が少ないなどの報告がされています。
 現在、80歳の方の平均はまだ8.2本ですので、何とかして早い時期に「8020」を達成したいと考えています。それでは「8020」達成を妨げるものは何でしょうか? つまり、歯が抜けてしまう原因ですね。これはむし歯と歯周病で9割ぐらいを占めていますが、ここ数十年変わっていません。お口の中に発生する二大疾患といわれています。
 ところが、歯周病をよく観察してみますと、むし歯治療で詰めたり、かぶせたりしたものが原因で発病したものが少なくありません。そして、この2つの病気の予防法は共通のものがほとんどです。ということは、まず私達はむし歯にならないことに全力を尽くさなくてはなりません。それに、前にも述べたように「歯の組織は再生しません」。ですから、私達は何としても歯を病気から守らなくてはいけません。
 ここでのキーワードは、プラークコントロール、定期健診、そして、フッ化物の応用です。

定期健診でむし歯を予防!(その1)
 「歯の組織は再生しない」、つまり「むし歯は治療しても治らない」ので、むし歯にならないように予防することがとても大切です。しかし現実は、むし歯が進行して大きな穴が開き、痛み出してから歯科医院にかけつけるというのが一般的なようです。
ご自分の歯を守るためには、ぜひ定期的な歯科健診を受けましょう。
 実は、むし歯はそう簡単に進行するものではないのです。
口の中にいるある種の細菌が食物中の糖を取り込み,分解して酸を産生し、この酸が歯の成分であるハイドロキシアパタイト(リン酸カルシウムの結晶)を溶解するという過程を脱灰といいます。
 一方、唾液がこの酸を中和し、エナメル質表層にはリンやカルシウムが沈着して元の状態に戻そうとします(再石灰化)。この脱灰と再石灰化のバランスが保たれていれば、むし歯は進行しません。歯がむし歯になり、穴があくという現象は脱灰と再石灰化が競争をして脱灰が優勢であるということを意味します。
 この競争で再石灰化に加勢するためには、適切なプラークコントロール、食生活の改善(間食の制限)、フッ素の応用などの手助けが必要であり、これをチェックするためにも定期健診が必要なのです。
ごく初期のむし歯というのは、歯の表面に目に見える穴があく前で、歯の表面が白く濁っていたり、表面的な褐色が認められる状態をいいます。歯科健診により、ごく初期のむし歯を早期に発見し、歯を削らずに、むし歯が進行しないようなお手入れや食生活の改善などの対策を立て、定期的にむし歯の進行状態を確認していきます。
 このように初期のむし歯を経過観察(Observation)の必要なむし歯『CO(シーオー)』と診断して、治療の必要な歯と分けて扱っています。
ブラークコントロールのすすめ -『歯磨き』とどう違うのか?-
 食事をしたあと、歯の表面をつめでこすると、白いものがとれてきますね。これはプラーク(歯垢)というものですが、中身はなにかご存知ですか?
たいていの方はこれを食べかすだと思われていますが、実は細菌とその細菌がだした排出物のかたまりなのです。
 つめの先にとれるプラーク(1mg)の中に2~3億匹ほどの細菌がひしめいています。腸の中で細菌が共存しているのと同じで、口の中にも粘膜や唾液の中に約400種類の細菌が暮らしていますが、歯垢はとてもねばねばしているため、細菌の格好のすみかになってしまうのです。そこにむし歯や歯周病の原因菌も一緒に住み込み、酸産生菌が作る酸でむし歯が、歯周病菌が作る毒素や酵素で歯周病が引き起こされます。
 この歯垢はうがい程度では取り除くことができず、機械的にプラークをこすりとる必要があります。ただ、歯ブラシだけではかなり熟達した方でも全体の58%ほどしか歯垢はとれず、フロスや糸ようじ、歯間ブラシといった歯間清掃用具を併用させてやっと95%の歯垢を取り除くことができるようになります。しかし毎日95%の歯垢を除去するのは、ふつうの方にとってはかなりの努力を強いられます。実際にはプラークを完全にとらなくても唾液の力や免疫力によって、むし歯や歯周病を抑える力が働いていてくれています。そこで、むし歯や歯周病が発症しないぐらいの低いレベルに歯垢の量をコントロールしようということで、プラークコントロールという言葉ができました。
 またむし歯や歯周病のリスクが高い人には、一度機械的に歯垢を分解させておいてからフッ素化合物やクロルへキシジンといった薬液を併用させるとより効果的です。
 歯磨き粉をつけて口をあわだらけにしながらごしごし磨く「歯磨き」ではなく、歯ブラシの毛先を1歯ずつ丁寧にあてたブラッシング方法と歯間清掃用具を効果的に使い、ご自身のお口の状況にあった適切なプラークコントロールを実践していきましょう。
歯を守る為に!よく噛むこと!?
 私たちは、毎日歯を使って食べ物を噛んでいます。この噛む事が歯を守っていくためには、大変効果的である事を御存じでしょうか?
食生活に起因しているのですが、現在私たちは食べ物を飲み込むまでの「噛む」回数がかなり減ってきています。50~60年前は一度の食事で噛む回数が1500回以上であったのに、現在は500~600回と減少し、噛まなくても食事ができるようになってきています。
「噛む」ことは歯を守るだけではなく、健康にも良い事を知ることはよい事であると思います。
 例えば、噛む事で唾液が分泌されます。 唾液は1日に約1500ccも分泌されると言 われています。分泌されると歯が自然ときれいになる自浄作用や、食べ物の中の酸を中和してむし歯や歯周病を予防する事ができます。
また、唾液に含まれるラクトペルオキシターゼという酵素は発ガン性物質をつく り出す活性酵素を減弱させる働きがあるといわれています。
 注目することはまだあります。噛めば噛むほど唾液の分泌をしている器官の働きが盛んになり、唾液ホルモンが膵臓に働きかけてホルモンの分泌を活発にする事もあり、糖尿病など生活習慣病の予防にもなるのです。
唾液は、口臭予防、口腔内の乾燥も防ぎます。もし口腔内が乾燥してしまったら粘膜は貼り付いて動かなくなり、赤く腫れ上がって何も食べられなくなってしまいます。
そんな訳で唾液はとても大事ですし、噛むことも大事ですね!
 噛む事で良い事は唾液の分泌だけではなく、味覚にも刺激してノルアドレナリンという物質が分泌され、全身の細胞の活動を活性化したり、満腹感が得られ肥満予防にもなり、当然、胃腸にも優しく消化を助けることにもなります。「噛む」という動作がこんなに歯を守るため、また健康の為になるのなら少なくとも今よりもゆっくりよく噛んで食事をすることを習慣としてみてはいかがでしょうか?
 何時からにしますか? 今日からでもよく噛んでみてくださいね!!
定期健診でむし歯を予防!(その2)
 むし歯がなぜできるかは、既にこのコーナーでもたびたびふれましたし、またテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、HP等でもそれについての話はたくさんありますのでご存じのことと思います。
 さらにむし歯をつくらないためにはプラークコントロールといって歯みがきが大切なのも今更言うまでもありません。しかしこれだけ周知されていても、毎日きちんと実行できるかというと、これはまた話は別でそう簡単なことではありませんね。部屋や車の掃除とは違い、対象を見ながら掃除をする事ができないこともプラークコントロールを難しくしている要因の一つであると言えるでしょう。むし歯ができる原因にはある種の細菌が関与しているのですが、口の中にはいろいろな細菌が数多く生息しているため、むし歯菌のみを選択的に取り除くことは容易ではありません。むし歯は感染症とされていますがそれならば、むし歯菌に良く効く薬の登場に期待したいところです。しかし特効薬がない現段階では歯ブラシで毎日歯を磨くという原始的な方法以外に効果的な方法はありません。ですから結核や赤痢などのいわゆる「感染症」と同列に「むし歯」を考えて、「むし歯菌」を目の敵にし、ストイックになるよりも、プラークコントロールという言葉が示す通り、歯面や歯肉についた不要なプラークを除去するというように思って頂くと良いかもしれません。
 糖尿病の患者さんは血糖値が上がり過ぎると大変なことになります。ですが仮に血糖値が健康な人よりも少々高くても、コントロールされていればそれほど日常生活に支障を来すことはありません。糖尿病患者の血糖値をプラークと置き換えてむし歯を考えて頂くとむし歯という疾患への対処の仕方がわかりやすくなるではないかと思います。プラークコントロールがうまくできていればむし歯はもとより歯周病の予防にも効果があることは言うまでもありません。歯周病を治したら糖尿病も治ったなんて報告もありますが、目的は違っていても歯周病と糖尿病ではアプローチが似ているところが多いのです。そう考えるとむし歯も歯周病も生活習慣病と言う側面を持っていると考えても良さそうですね? ですから定期健診が、ますます重要な意味を持ってくるのです。毎日のプラークコントロールはもちろん、半年から一年に1度の定期健診でこのプラークコントロールがきちんとできているかをチェックすることによって、むし歯や歯周病の発生を防ぎ、また既にこれらの疾患がある人もひどくならないようにできるのです。
フッ化物について
 フッ化物とはフッ素原子が含まれている化合物です。フッ素イオンが歯の無機質成分・塩基性ヒドロキシアパタイトに触れると、耐酸性のフッ化アパタイトに転換され、乳酸と反応しにくくなります。塩基性ヒドロキシアパタイトと、口腔内でむし歯を作る原因菌といわれているミュータンスレンサ球菌などが作り出す乳酸とが中和反応して、ヒドロキシアパタイトが溶かされて歯が脱灰されます。これが虫歯の原因であることを考えると、フッ化アパタイトは虫歯の抑制効果があることは納得できます。この効果は疫学的調査により偶然見つかったものでした。20世紀の初めにアメリカで斑状歯(斑点や縞が見られる歯)の調査が行われ、斑状歯の原因は地下水のフッ素イオン濃度の高い地域で、これを水道水として供給していることが原因であることがわかりました。その時、同時に虫歯の調査を行ったところ、斑状歯が多く見られる地域では虫歯が少なかったのです。
 虫歯は口の中の細菌が作り出す乳酸が歯を溶かすことによって起こりますが、食物を食べれば口の中は一時的に酸性に傾いて歯の表面は溶かされ(脱灰)ます。通常は唾液の緩衝能によりに、唾液は中性を示すようになりますが、歯の表面には食物残渣を利用してミュータンスレンサ球菌等が唾液不溶性のプラークを作り、その中でミュータンスレンサ球菌などが作り出す乳酸は歯を効率的に脱灰してしまいます。ですから、これを防ぐために食後にはブラッシングによるプラークコントロールを実施する生活習慣を体得する必要があります。 
 フッ素の働きは脱灰を抑え、再石灰化を促すことであり、また再石灰化する時にフッ素が歯に取り込まれると歯の耐酸性が上がります。さらにフッ素には細菌の病原性を弱める効果もあると言われており、その結果虫歯になりにくい歯になるわけです。
 フッ化物を応用するには、フッ化物配合歯磨剤(歯磨き)、フッ化物洗口剤、フッ化物歯面塗布剤があります。フッ化物配合歯磨剤の市場占有率は87%(2003年)ですので、ほとんどの歯磨剤にはフッ素化合物が入っています。フッ化物洗口は保育園や学校などで実施されることが多いですが、個人でも行うことができます。フッ化物歯面塗布剤は歯医者さんで行われるもので、フッ素の濃度は歯磨剤や洗口剤に比べかなり濃いものになっています。
 歯は生えてきた数年間が最も虫歯になりやすい時期なので、フッ化物の応用も幼児期から学童期・生徒期に、学校保健をベースとして行われてきました。しかしながら最近では根の虫歯に対してもフッ化物が有効であるとされ、成人や高齢者を含めてライフステージに応じた応用が検討されています。もちろんフッ化物だけで虫歯を防げるわけではなく、先ほど述べたようにプラークコントロールや食生活が大切であることは言うまでもありません。
歯を解かす!pHの低い飲料と救世主・唾液
 歯科衛生士:深川 優子
 一般に口腔内のpHが5.5以下でエナメル質う蝕が発症し、象牙質う蝕はpHが6.0~6.8で発症します。
では、う蝕を予防するためには、「口腔内のpHを中性以上に保てばいい」と簡単に考えてしまいますが、私達が日常口にしている飲料のほとんどはpHが低く、口腔内は、常にう蝕の危機にさらされています。
 こんな数字を見てしまうと飲食するのが恐くなりそうですが、安心してください。お口の中には唾液という救世主がいます。唾液には緩衝能*という力があり、飲食で一旦低下したpHを中性に戻す働きがあります。また、う蝕原因菌が産出する酸により脱灰されたエナメル質を再石灰化させる作用もあるので、唾液の役割は大変重要です。
*緩衝能(緩衝作用)とは、ある溶液に酸やアルカリを加えて、溶液がpHの変化を弱める作用を持つ時、この溶液の作用を緩衝作用という
 昨今、ストレスや長期薬剤の服用により唾液の量が少なくなる「口腔乾燥症」が増加しています。唾液の量が少なくなると、口腔内の細菌が増加し、う蝕ばかりでなく、象牙質知覚過敏症も発症します。最近では、カリエスリスクの一指標として、唾液の量と緩衝能を検査する歯科医院も増えてきました。ご自分の唾液の質と量を知りたい方は、検査してもらいましょう。
むし歯の歴史
 「どうしたらあなたの歯を守れるか」についてこれまでいろいろなことをお話ししてきました。今回は少し趣向を変えて、むし歯と歯科医学そのものの歴史についてお話ししようかと思います。歴史を振り返ることは決して後ろ向きと言うことではありません。「温故知新」という言葉が示すようにむし歯の歴史を知ることによってむし歯にならない方法を見いだせるかも知れないという期待があるからです。
 御存知のように医学には長い歴史がありますが、一方で歯科の歴史というと実はそれほどではありません。近代歯科医学の鼻祖はピエールフォシャール(1678―1761)というフランスの外科医で、当時まだ歯科治療が大道芸の域を出なかった頃に歯科医術という新しい分野を開拓し学問として初めて体系付けた人です。その後、彼の残した業績がヨーロッパ各国でも評価され多大な影響を与えました。その後アメリカのメリーランド州のボルチモアに世界で初めての歯科医学校できたのは1840年、また1867年にはハーバード歯科医学校ができて総合大学の一学部となりました。むし歯に苦しむ人が世の中に蔓延し学問としての研究の対象にしなければならなくなったというわけです。日本でいうと近現代(明治~現在)に当たり、まだ200年にも満たないのです。今でこそむし歯はだいぶ減少してきて昔のようにこの病気に悩む方も減ってきました。特に子供のむし歯はむし歯有病者率、DMFTで観ても、減少傾向にあり以前に比べればむし歯で苦しむ人は確実に少なくなってきたように思います。ではなぜこの当時、むし歯に悩む人が急に増え始めたのでしょうか?
 我々の食生活には砂糖は欠かせないものと思わせないほど不可欠なものになりました。しかし、人類の食生活の中で砂糖が食品として登場するのは400年ほど前からといわれています。砂糖の原材料であるサトウキビはパプアニューギニアが原産といわれていますが、これがインドに伝わり、侵略、征服の歴史とともにイスラム、北アフリカ、ヨーロッパあたりまで栽培法が拡がっていったようです。しかしサトウキビの栽培は大規模経営が必要なこと、また重労働でもあることから、当時の砂糖は食品というよりも薬品、貴重品に属しており、庶民はやたらに口にすることはできなかったようです。ですから当時のむし歯は「贅沢病」ということになります。そしてコロンブスが西インド諸島を発見し大航海時代を迎えるに伴い「植民地(プランテーション)」と奴隷という「労働力」が確保され、砂糖の生産量は飛躍的に伸びていくわけです。生産は新たな消費を生み、それがまた生産を増やすという生産―消費サイクルができ、砂糖が富裕層の贅沢品から庶民の食生活の必需品と一転していきました。「砂糖は白いダイヤ、黒人奴隷は黒い黄金」という言葉からも砂糖の消費量が爆発的に伸びていったことが伺われます。いつの世でも人間の欲望とは際限のないものであり、その裏には不当な扱いに苦しむ人間がいるのです。イギリスでは一人あたりの砂糖消費量が1850年頃から爆発的に増加し始めます。それは「アフタヌーンティー」が大流行した時期と重なります。また繊細で高度な技術をもった菓子職人のいたフランスでも、ボンボン、砂糖漬けフルーツの取引が急増してヨーロッパではむし歯が猖獗を極める時代へと突入するのです。あの有名なマロングラッセもこのころのできたお菓子でしょう。
 こうしてむし歯の歴史を見てくると、むし歯は生活食習慣がもたらした人災なのかも知れません。食べることは生きていく上で欠くことのできない行為であるとともに、人間の本能でもあります。またおいしく食べたいというのも人間として偽らざる気持ちだと思います。であればやはり歯磨きはむし歯にならないで食を楽しむ最も賢明な方法だと考えますがいかがでしょうか?
鏡で自分の口の中をじっくり見てみて見ましょう。歯の溝、歯茎との境目あるいは隣の歯との間に「黒い」ものはありませんか?見つかった人は気をつけて下さい。それはむし歯かも知れません。むし歯は決して治ることがありませんし、放置しておけば七転八倒の痛みが待っています。「黒い色」「痛み」「不治の病」、これはひょっとすると遠い昔、富と食の快楽を求め過ぎた一部の人間達の陰で苦しんでいった「黒人の恨み」なのかもしれません。
口の中はからだの外
 「口の中はからだの外」だという事を知っていますか? 唇のところから開いて肛門まで続くからだを貫く長い管の入口です。入るとすぐに歯、舌、口蓋、頬でできた口腔という空間が存在します。そしてここで生じるトラブルを我々歯科医が扱うのです。
 「えっ」と思った方もいませんか?そう思った人、右手の人差し指を口に入れて見ましょう、容易にできますね。これは人差し指も、口の中も同じサイド、つまり外側にあるという証拠です。
 では口の中でいうからだの中とはどこを指しているのでしょうか? 一般にからだの中と外界は簡単に交通できないような仕組みになっています。手をみてみましょう。手の再表層には角化した組織があり、ここについた汚れ(異物、細菌)も付いているだけでは、からだの中に入れません。しかしこの角化した組織もひとたび破れると、それは「傷」という穴があくことになります。この穴を通して、からだの中から血が出てきますが、一方、外界からは細菌などが侵入して病気を起こす事になります。すなわちこれが感染症の成立です。
 さて、口の中を見てみると、口蓋や、舌、頬、歯肉を構成している粘膜と、歯があります。これらの最表層は連続していて口の中という外界とからだの中とを区別している砦を作って、これが唾液という体液によって覆われています。頬、舌、歯肉などは血流があるため仮に破れても治癒は容易にできます。一寸したかみ傷、口内炎などであれば、わざわざ歯科医院に行かないですね。抜歯をしてあんなに大きな穴が開いても、大きな問題にならないのは、この粘膜に血流があって治癒力がある事、口腔という半ば閉ざされ、唾液によって常に湿潤した環境である事があげられます。
 一方歯の最表層はエナメル質といって、ハイドロキシアパタイトでできています。粘膜と違って血流がないため、ひとたび穴があくともう治癒は望めません。そこで「人工エナメル質」の出番となるわけです。この話は、本サイトにも沢山出ているのでそちらを参考にして下さい。
 もうひとつ考えなくてはいけないのは、歯と歯肉との結合です。ここが壊れると歯周ポケットという穴があきます。歯肉には血流があって治癒を期待できますが、一方の歯は治癒の望めない組織ですから穴があくと当然開いたままという事になります。ここの穴が深くなれば、入るものも多くなりますし、自分では容易に掃除する事もできません。ここから細菌が侵入すると「歯周病」という事になるわけです。従って日頃からこの穴を清潔にしておく事が肝要です。こう考えると歯周病と全身疾患が関係するという話も容易に想像がつきそうです。また「歯周病」も「むし歯」もこの砦が壊れて起きる疾患という考え方もできますね。この大切な「砦」これを壊さないようにするのが「予防」と考えます。

永久歯の歯並び
根面う蝕 など

口を閉じない子供たち

歯石を取るとむし歯に
なりやすい!?
(KDC HPに移ります)

第7回
猛暑で売れた知覚過敏歯磨き