なるほど!歯の雑学

安田院長と歯科医療に携わる仲間たちが書いた「歯と口」にまつわるお話です。

口を閉じない子供たち

 
 先日小学校の入学式で、校長先生のご挨拶を聞く機会がありました。まずはじめの一言が、「はい皆さん、お口を閉じて!」でした。そう、校長先生のお話を聞く子供たちの口が開いたままなのです。周りのお子さんを見てください。ゲームをしたり、テレビを見ている子供は口を開いたままです。昔からものごとに集中している時は口を閉じて歯をかみしめていると思われていますが、最近の子供たちはいつでも口が開いたままです。たしかに一流のスポーツ選手が集中している時は、必ずしも歯を噛みしめているわけではなく、口を開けてリラックスしているようですが、しまりのない口元は好印象を与えません。
 
 ところでこの写真は最近若い女性の間で話題となっているリップトレーナー「パタカラ」という口を閉じる訓練をする装置です。これは、口を閉じる筋肉「口輪筋(こうりんきん)」を鍛えるものですが、「小顔」になる美容器具として人気があるようです。この製品、本来は脳卒中の後遺症などにより、口輪筋の機能が低下した人のためのリハビリ用装置なのですが、口呼吸(こうこきゅう)やイビキの予防にも効果があることが分かってきました。
口が開いたままというのは、「口輪筋」の働きが弱いということであり、歯科領域からみても、以下のような問題が起こりやすくなります。
 
1.歯並びが悪くなる
本来、歯は舌と唇(または頬)の間に位置しておりますが、舌と唇の力が均衡していることにより、歯がちょうど良い位置におさまっているわけです。唇からの力が弱くなると、歯は外側に移動しやすく、いわゆる「出っ歯」になりやすくなります。
 
2.口呼吸で口が乾燥
 口が開いたままでは、鼻ではなく口から息をすることになります。結果的に口の中が乾燥するため、歯ぐきにも炎症が起こりやすくなるのです。
 
3.嚥下障害や発音障害
食べ物をかんで飲み込むときに、口が開いた状態では飲み込むことはできません。つまり嚥下する(飲み込む)時には、唇をしっかり閉じることが必要になります。また、発音機能にも唇をすぼめる動きなどが関与しますので、発音障害も生じやすくなります。
 
前述の校長先生の「口を閉じない子供たち」へのメッセージは、心や姿勢の「緩み」を指摘しているものでしょう。大きな口を開けて笑えることも大切ですが、たまにはきりっと締まった口元も見せないといけませんね。校長先生の言葉にハッと感じたのは父親だけだったようですが。

睡眠時無呼吸症候群

 
 寝ているときに、繰り返し呼吸がとまってしまう病気で、新幹線などの居眠り運転で広く知られるようになりました。主な症状は睡眠時のいびきと呼吸の停止で、熟睡できないために日中に眠気が生じ居眠りしてしまうことが多いのが特徴です。
 
 
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に10秒以上の呼吸停止が、一晩7時間睡眠で30回以上、あるいは1時間あたり5回以上起こるものをいいます。日本人では中壮年の3-4%以上がかかっているといわれ、日中の眠気や生活(QOL)の低下、作業事故、交通事故の増加のみならず、高血圧や心臓病、脳血管障害を悪化させます。
 睡眠時無呼吸症候群には、閉塞型、中枢型、混合型がありますが、このうち圧倒的に多いのが口蓋垂(のどちんこ)や軟口蓋(上あご)の後方または舌根部(舌のねもと)の後方、すなわち上気道で閉塞がおきる閉塞型です。肥満や高齢による筋力の低下、口蓋扁桃肥大、鼻の病気、下顎の後退などいくつかの原因が単独もしくは複合で関与しているといわれています。
診断方法は、睡眠検査施設で脳波、いびきセンサー、口鼻気流測定、診断図、筋電図などが複合された検査機器を使う夜間睡眠ポリグラフが一般的です。
 

 治療法としては、減量、鼻マスクから気道に空気を送り込んで閉塞した上気道を開く経鼻的持続気道陽圧(CPAP)療法、閉塞がおきる部分の耳鼻咽喉科の外科手術などがありますが、最近注目されてきているのが口腔内装置(図)です。これは夜間に口腔内に装着するもので、下のあごを前方に保持し上気道の閉塞を改善させる効果があります。CPAP療法や耳鼻科的な手術の適応とはなりにくいケースにむいており、上記の睡眠ポリグラフ検査を受け適応と判断されれば2004年4月から健康保険もきくようになりました。顎関節に異常がある人には不向きですが、他の治療法に比べ簡易で患者さんの負担も少ないメリットがあります。まだ内科や耳鼻科と歯科の連携が十分でないのが現状ですが、睡眠時無呼吸症候群の患者さんにとって適切な治療がうけられる環境が整備されることが期待されます。(図はいずれも「歯医者さんで治す!いびき・無呼吸ネット」より引用)

タンポポは『ライオンの歯』

安田 登
 春になると道端や野原に可憐な黄色い花を咲かせるタンポポは、原産地を北アジアやヨーロッパに持つキク科の植物です。葉の形のギザギザがライオンの歯に似ていることから西欧では「ライオンの歯」と呼ばれています。英語でdandelionといいますが、これはもともとフランス語のdent-de-lionから来ています。dentは歯、lionはライオンですから、そのまま訳すと「ライオンの歯」となるわけですね。
 
 このタンポポ、ハーブティーとして飲むととても健康によいそうです。体内の毒消し、腫れ物消し、利尿作用、リウマチ、黄疸などなど・・・。 知らなかったですねえ。それとタンポポコーヒーって知っていました? この道のツウの方たちには常識なのでしょうけれど、正直言って私は始めて聞きました。こちらの方は根を利用して、これを煎じて飲むそうです。カフェインが入っていないので飲みやすいそうですよ。ふーん!今度やってみようかな?
 
 タンポポは北海道開拓時代に食用として輸入されたらしく、このほかにもサラダ、タンポポ酒なんかもできるのだそうです。お酒のほうは梅酒なんかと同じで、いろいろなリキュールにタンポポを入れて10日間漬け込んだあと、タンポポを取り出し3カ月くらい熟成させるのだそうです。
 
 何か歯にちなむよもやま話をと思って、フランスにいたとき仕入れた「ライオンの歯」の話を書き始めたのですけれど、何だかタンポポそのものの話のほうが面白くて、こんなよもやま話になってしまいました。
 
※DandelionというHPからたくさん情報をいただきました

枕草子

 
 「枕草子」を皆さんは、御存じと思います。今から千年ほど前に清少納言が書き綴ったものですが、一番は「春は、曙。やうやう白くなりゆく、山際すこしあかりて、~」で はないでしょうか。今頃になって「枕草子」の宣伝ではないのですが、この中で独断と偏見もありますが面白いものをいくつか御紹介します。
「ありがたきもの 舅にほめられるる婿。また、姑に思はるる嫁の君。~」この中にある"ありがたきもの"は、あることが難しいの意味だそうで、めったにないことのようで、千年も前から嫁姑は現代的だったのでしょうか?ちょっとおかしくなります。
 「ふと心劣りとかするものは、男も女も、言葉の文字卑しう遣ひたるこそ、よろづのことよりまさりて、わろけれ。~」 現代的に言うと、"男も女も言葉遣いの卑しいものは、幻滅する"という意味でしょう。このようなことは年を取ると考えるのかもしれませんが、言葉の使い方が気になったりしますよね!でもこの清少納言も当時はそう言われていたかもしれないと思うと、現在と同じことを考えていたのかもしれません。
 顔や歯についても、少しずつ書かれています。前の歯が欠けていたら恥ずかしいといったことや、口が臭うなどのことも書かれています。
千年も前から歯科医師はいなくても、みんなで口や歯の健康を考えていたのかもしれません。
しかし以下のようなこともありますが、 「~歯をいみじう病みて額髪もしとどに泣き濡らし、乱れかかるも知らず、面もいと赤くて、おさえて居たるこそ、 いとおかしけれ。」 
歯が痛くて、髪を振り乱して泣いている姿をあらわしていますが、当時は、病に対しては祈祷や、陰陽師が携わっていたとおもいますが、歯の痛みには対処出来ていなかったのでしょう。
 千年も前の人達が食生活や環境は違っても、考えている事は同じ、歯を治すためにはどうすれば?なんて考えていたかもしれないと思うと、何か不思議な気分になりませんか?最近、現代語に翻訳されたというか、直訳された本が沢山出版されているようですので、御興味のある方はいかかですか?

将軍様の口の中はむし歯だらけ?

 
 徳川時代は300年続きましたが、最初の頃と江戸時代も末期になる頃の将軍様では口の中の状況が著しく異なっています。初代将軍家康、2代将軍秀忠の頃はまだ戦国時代の名残で、食べるものも硬く、粗末なものが多かったせいか、顎もしっかりとして、秀忠にはむし歯が1本もないことが知られています。
それに引き換え幕末になると、将軍家の食事は贅を極め、当時としては珍しい砂糖も薩摩の島津藩を通じて献上され、養生の品として使用されています。そうすると、考えられることはむし歯の発生です。1958年から1960年にかけて行われた増上寺徳川将軍家墓所の改装に伴う発掘調査記録(「骨は語る・徳川将軍・大名家の人々」鈴木 尚)によりますと、第14代将軍徳川家茂(1846-1866)は上下顎共にむし歯がとても多かったことが示されています。 21歳で夭折していることから考えるともともと体の方も弱かったのかも知れませんね。
 しかし、むし歯が多いこともさることながら、時の最高権力者の地位にいた徳川将軍が1本の治療も行っていないことに驚かされます。19世紀の半ばといえばわずか150年ほど前にしか過ぎませんので、むし歯の治療はほんの最近まで行われていなかったのですね。
歯科の歴史を語るとき、起源はエジプト時代とされたり、紀元前の古人骨からむし歯の治療跡が発見されたなどの記事を認めることもありますが、将軍様の顎骨の状況を見るとにわかに信じることは出来ません。むしろ、宗教的な儀式の一環として、あるいは美しさを求めた結果として歯を傷つけ、穴をあけたとする考えの方が分かり易いですね。何しろ人間は美を求めることに対しては何でもしてしまいますからね。

永久歯の歯並び
根面う蝕 など

2017.7.20 更新

歯石を取るとむし歯に
なりやすい!?
(KDC HPに移ります)

第7回
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